2024年のベトナム経済に関する見通しが、中央経済管理研究所(CIEM)とアジア開発銀行(ADB)の最新のレポートにより明らかにされました。CIEMは計画投資省および国連開発計画(UNDP)と協力して行ったマクロ経済シンポジウムで、2024年のベトナムの国内総生産(GDP)成長率に関する3つの異なるシナリオを提示し、その中で潜在的な課題と展望を探っています。
この3つのシナリオには、ネガティブなシナリオで+5.5%、メインシナリオで+6.0%、そしてポジティブなシナリオで+6.5%の成長率が予想されています。とはいえ、ベトナムの主要な貿易相手国がマイナス成長を予測される中、経済は引き続き複数の困難に直面することが懸念されています。
2024年のインフレ率は2023年を上回る見通しですが、ベトナムにおいてはまだまだ法制度とビジネス環境の整備が整っておらず、法制面の環境及びインフラ整備がこれから先進国入りを目指す上では重要になってくると考えられます。ベトナムの経済の中心であるホーチミン市とハノイ市は一定の頭打ちに入ったとも言われており、成長が鈍化している一方で、新たな経済の原動力地域がいくつか台頭してきていますのでご紹介しましょう。
ハイフォン市・Thành phố Hải Phòng
人口200万人を抱えるハイフォン市は、工業の拠点としてだけでなく、文化、教育、科学の分野でも急速な発展を遂げています。ベトナム北部経済において不可欠な存在となり、投資家には特別な税制優遇や地方政府からのサポートが設定されており、進出企業にとってはさまざまなメリットがあります。第三の中央政府直轄都市としての地位を誇り、物流インフラ整備プロジェクトも進行中で、高速道路やラックフェン深水港(日本政府ODAによる支援)までを結ぶ大規模な橋梁などへのアクセスが向上する予定で、ますますベトナム北部の経済拠点としての役割を担っていくと考えられます。経済成長に伴い、市民の住環境も大きく変わってきており、製造業に限らず多様な業種が進出。外国人駐在員の数も増加し、住まいの環境が著しく向上、このような背景により、ハイフォン市は国際的なビジネスハブとしての地位を今後も確立して苦と考えられています。
クアンニン省・Tỉnh Quảng Ninh
クアンニン省はベトナム北部に位置し、観光地として有名なハロン湾のある省です。美しい自然景観と岩の島々で知られるハロン湾は、世界自然遺産に登録され、昔から地域経済に観光業が大きく貢献していました。2020年にクアンイェン経済特区が制定されたことを皮切りに、これまでの観光業中心の産業から生産・物流拠点に特化し、首都ハノイ・ハイフォン・クアンニン省とベトナム北部経済3角形として新たな役割を果たしています。現在、ベトナム国内で最も長い高速道路(264km)は首都ハノイと、このハイフォン市を結んでおり、さらに中国国境まで直結していることで、現在は物流の拠点として大きな注目を集めています。また、水運拠点として213港もあり(貨物港が174、一般港が39)と103本もの運河があることから、物流インフラが整備され、さらに、バンドン国際空港などの空路も整備されていることから、多岐にわたる交通ネットワークの影響により、今後も地域の発展に寄与していくと考えられています。
タインホア省・Tỉnh Thanh Hóa
タインホア省は北中部にあり、ベトナムにおける重要な工業の中心地の一つです。省内には多くの工業団地があり、製造業や加工産業が盛んに展開されています。また、鉱山資源が豊富で、特に石炭が産出されていることからエネルギー資源の輸出の観点としても重要な拠点とされています。現在では、ベトナム国立大学タインホア校を中心に、外資系企業に対しての人材の育成・教育が積極的に進められており、再生可能エネルギーの開発や持続可能な技術の導入が進められるなど、新興産業やハイテク分野において競争力を強化を進めています。環境技術やクリーンエネルギー分野においても積極的に活動していることから、今後のベトナムにおける新たな経済の原動力となることが期待されています。
また、政府は2025年に全線開通を目指す南北高速道路東側の一部となる<タインホア省ーゲアン省>の高速道路の開通を今年10月に発表。これまで首都ハノイ市から南方へ251キロ離れたゲアン省までの車移動は5時間程度を要していましたが、この高速道路の開通によって、3時間30分に短縮されるなどインフラの整備も進んでおり、将来的な経済成長に期待されています。
上記で紹介した都市をはじめとして、ベトナムでは新たな経済拠点が台頭しつつありますが、その数は限られており、まだまだ国の経済に対する影響も限定的だとされています。CIEMは、マクロ経済の安定化やインフレ抑制、法制度とビジネス環境の改善、インフラ整備が必要であると述べつつ、企業・事業体への支援を強化し、商品・サービス市場を促進するために省・市の役割を重視する政策を優先すべきであると主張しています。
ホーチミン市・ハノイだけでなく、今後もさらに注目されてくると考えられるベトナムの様々な地方都市と地方経済。製造関連企業はもちろん、消費活動も活発化してくると考えられることから、日本の小売企業にとっても無視できないエリアとなってくることが十分に考えられます。流通はもちろん、プロモーション活動を行う上でのチャネルも限定的であるこれらの新たなエリアをいかに早期に攻略していくかが重要だと考えられます。トライベトナムではこれらの地域経済に対しても影響力を持ったディストリビューターやKOLとリレーションを構築し続けることで、今後ベトナムにチャレンジする日本企業の海外でのチャレンジをサポートしていきます。
参照:BNEWS.vn・独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)・DEEP C 工業団地